正直者は馬鹿をみなかった話
今日は暑い暑い夏の新潟競馬へ行った時の話をしましょう。
地方開催は楽しさいっぱい
日本中央競馬会には十ヶ所の競馬場があります。札幌、函館、福島、新潟、東京、中山、中京、京都、阪神、小倉で中央開催は東京、中山、京都、阪神で行われますが、夏競馬は函館、新潟、小倉などのローカル開催となります。ローカル競馬は競馬とは別に、いろんな楽しみがあり結構人気があります。例えば福島だと飯坂温泉、函館だと湯の川温泉などに泊まって旅の気分を楽しんだり、ご当地の美味しいものを食べ歩いたりとか、中央では味わえない面白さがいっぱいなのです。だから私達競馬好きは六、七人でよくローカル競馬に出かけていました。
嘘!思わぬ大金が手に
その夏、新潟競馬へ行くことに話が纏まり、世話役の私が取引先に頼んで、新潟市内の某ホテルの宿泊予約を取り、金曜日の夜車で東京を発って翌朝新潟競馬場に着きました。新潟競馬場は市内からかなり北寄りの豊栄にあり、直線千メートルのコースがある広々とした素晴らしい競馬場です。私達は1レースから最終レースまで一日競馬を楽しみましたが、堅いレースは滅茶苦茶堅く、一寸本線が外れるとかなりの高配当が付き、結構穴馬券も飛び出すという傾向がありました。私はいろんな種類の馬券を何レースか取りましたが、何時もの習慣で当り馬券をみんなポケットに仕舞い込んでいました。最後に纏めて払戻しを受けるのです。
今ではどこでも全て機械化されていますが、当時はまだパートのおばさん達が窓口で払戻し業務をやっていました。この日の私の払戻し金額はトータルで二十万円一寸位でしたが、窓口で差し出された金は六十万円もありました。
「これおかしいですよ。そんなにないですよ。」
咄嗟に私は言って金を返し、計算し直して貰いました。
「間違いありません。どうぞお受け取りください。」
そっくり金はまた私の手に戻ってきました。
「違いますよ。半分も無いですよ。」
「いや、間違いありません。」
何度も何度も同じことを繰り返しました。もう他の客は誰も居なくなりガードマンもみんな集まって来ました。窓口のおばさん達もみんな手がすいたので寄って来て、みんなで計算のし直しをやりましたが結果は同じことです。
「多いんだったらいいじゃないか。貰っとけよ。」
「何を何時までもやってるんだ。呉れるものは貰えよ。」
仲間達からも責めたてられ、だんだん自信が無くなりました。もしかして私が間違っているのかもしれない。
「これだけ何度も計算し直して間違っていないのですからどうぞ受け取ってください。お客さんの勘違いですよ。」
狐に抓まれた様な気持ちでしたが、とうとう言われるままに受け取りました。
「おお、今夜は豪勢にいこうぜ。」
「古町にいい所あるよ。予約入れとくか。」
もう仲間はみんなその気になっている。しかし私はどうも腑に落ちないし浮かれた気分になりませんでした。
夢は一瞬に覚め最悪の事態が
私達七人は全員、三原色の縦縞の紙風船を二つ折にしたような帽子を冠り、派手なアロハシャツに半ズボンという何とも奇妙な格好をしていました。駐車場に着くともう車も殆どいません。私達を探すのはいとも簡単で直ぐ見つかります。
「お客さーん。お客さーん。」
三人のおばさんが追っかけてきました。
「済みません。お客さんの方が正しかったです。私達が間違えていました。」
ということで夢は一瞬にして覚め、大騒動は幕引きになりました。
「ぐずぐす言ってるからだよ。馬鹿みたい。」
「何時も取られてるんだから貰っておけば良かったんだよ。」
「何で黙って貰って帰らないんだよ。」
楽しみにした夜の当てが外れて仲間達はカリカリして、私に非難の声を遠慮なく浴びせかけます。
「仕方無いだろう。もともと間違いだったんだから。」
むっとした私も言い返し何だか雰囲気が悪くなってきました。みんな黙り込んだり寝た振りしたりしているうちに車は予約していたホテルに着きました。ここでまた大変な事態が起きてしまいました。
フロントで予約が入っていないと言うのです。そんな馬鹿なと一悶着、結局予約の日にちが一日ずれていて、当日では無かったことが判明しました。さあ大変、宴会どころか寝る所も無い。ホテル側で方々電話をして万代橋の近くに旅館を取ってくれ、泊まる所はなんとか確保できた。
「もうヤケクソだ。トコトン行くぞ。」
収まらない連中は皆で繁華街へ繰り出しましたが、私は何だかひどく疲れ、遊ぶ気にもなれなかったので具合が良くないからと断ってひとり先に休ませて貰いました。
神は正直者を見捨てなかった
翌日、日曜日はまた朝から競馬場へ向いました。みんなは昨夜の行状が影響してさっぱり気勢が上がりません。私はこの日も朝から絶好調で一人ではしゃいでいました。馬券も面白いほど的中し、相当余裕ができたのでお終いのレースではドーンと纏めて投票したところ、これがまたものの見事に大当たり、昨日の六十万円どころかその倍額以上ものご褒美を頂戴してしまいました。
気分を好くして帰路についたのは言うまでもありません。阿賀野川を渡り、信濃川を越して新潟の街を後にして米どころ新潟の田んぼの間を走り続けると、青々と広がる稲の波の中に地方競馬を開催する三条競馬場がありました。小さくて粗末な観客席、狭くてちっちゃなコース、中央と地方の格差をまざまざと見せていました。いろいろあったけれど、まあまあ楽しかった競馬の旅を終えて夜の街道を突っ走り、明日から仕事をする東京の雑踏へ帰ってきました。
この時のことを今でもみんなによく言われます。
「馬鹿正直だから損するんだよ。」
私は笑って誤魔化しますが、決して損した訳じゃございませんよ。もともと貰うべき金じゃ無かったのですから。ずるい事をしなかっただけでしょう。そう腹の中で言ってやるんですよ。黙って貰って帰っていたら、翌日は二日酔いで朦朧として推理もろくにできず惨敗してたでしょう。これで良かったんですよ。ご褒美もたくさん頂きましたし感謝、感謝です。
正直者は馬鹿などみませんよ。神様は何時もちゃんと見ていて、時々人をお試しになるんでしょうね。
金の斧 銀の斧 のような 話しですね。w
でも、これ 大事な事ですね。
おめでとうございます。
by (2005-11-21 21:19)
やっぱり日ごろの行いがものをいうのですね!
私は東京競馬場しか行った事がないので、
いつか地方競馬場や、北海道の牧場を訪ねてみたいと思ってます。
by スペシャルエアー (2005-11-22 20:59)
よかったですね
なんかほんとに「ご褒美」って感じですね(*^_^*)
by sophy (2005-11-23 09:17)
そんな話があるんですねぇ。
私も真面目に生活してたらいいことあるかなぁ?( ´艸`)ムププ
by ぱんだぞう (2005-11-24 11:23)
良心に正直になること、これは神様が一番人間に期待してることでしょうね。
by Baldhead1010 (2005-11-24 12:40)
★Yupaさん 早々に有難うございます。そんな大それたことじゃ無いんですよ。普通、咄嗟に嘘はつけないですよね。ただそれが変な展開になったもんで・・・今でも不思議です。
★スペシャルエアーさん 面白いですよ。私は白老だとか早来、門別、静内、浦河などたくさんの牧場へ行きました。札幌のホテルに泊まってレンタカーで回りました。懐かしい名馬にあってとても楽しかったですよ。
★sophyさん いいことがあった時には何時もそう思うんです。神様からご褒美頂いたんだと(W)
★ぱんだぞうさん きっといいことありますよ。でももうご褒美貰っておられるのかも・・・だって何時も羨ましいなと思うご家族ですもの。
★Baldhead1010さん たった一つのとりえが正直であることかも。正直に白状しますと小さい嘘は幾つもつきましたが、人を騙したことは一度もありません。騙されたこともあまり無いですね。
by sasuke (2005-11-24 15:46)
確かに。その通りだと思います。
by (2005-11-26 11:30)
中京競馬場まで歩いて30分くらいのところに住んでいます(同じ街)
お越しになることがあったら、ご一報ください。
by (2005-11-27 07:34)
最近は、正直者が馬鹿を見る・・・ような世の中になってきている気がしています。
でも、正直者は最後には絶対に馬鹿は見ない!と信じています。
それにしても、100万円以上も競馬でもらえるなんて・・・sasukeさんはやっぱりすごいですね♪
by まめ (2005-11-27 10:50)
★STEALTHさん 中京競馬場のお近くですか。いいな、羨ましいです。いっぱい可愛いお馬ちゃんが見れますね。機会がありましたら是非よろしくお願い致します。
★まめちゃん 何時もどうもです。若い頃は結構馬鹿なこともしましたが、今は堅実に楽しんでいます。大きく買えば勝つときは大きいけど負ける時も損が大きくなります。百円で万馬券がいいですよ。
by sasuke (2005-11-28 13:47)
正直者は馬鹿を見ない。本当だね。
sasukeさんのその心意気や良し!
正直者は夢見もいいしね!!!
by U3 (2005-11-28 16:42)
★ブラウンパパさん そうですね、悪いことすると夢見が悪いといいますね。
あんまり良い夢も見ませんが・・・親父殿が「正直に生きろ」「正しい道を歩め」とうるさく言うし、そんな名前まで付けられたもんで嘘はつけないしずるいこともようせんのです。今晩あたりいい夢見ないかな???
by sasuke (2005-11-29 20:16)
毎度おおきに。
クリスマスシーズンを迎えてとっても良いお話をありがとうございました。
やはり神様はちゃんと見てくれてんですねぇー(素晴らしい)。
因みにわたくしは敬虔な仏教徒です(笑)
by へー八郎 (2005-11-30 12:09)
へー八郎さん 有難うさんです。キリスト様も天照大神もお釈迦様もみんな信じますよ。困った時だけ「あぁー神様仏様」じゃ・・・ね。日本にはたくさん神様や仏様が何処にでもいらっしゃるから誰かが何処かで見ていますよ(W)
by NO NAME (2005-12-01 09:00)
へーさん ごめんなさい。ログインしないで書いちゃった。上のguestは私sasukeでございました。ほんとそそっかしいんです。
by sasuke (2005-12-01 09:04)
いつもありがとうございます。遅くなりまして申し訳ありません。
競馬でもいろいろな楽しみ方があるんですね、競馬だけではなく物事のすべてにいえそうな気がします。
イソップ物語を読んでいるような感覚でした。そう、sasuke さんは平成の二宮金次郎を彷彿とさせます。おべんちゃらを言っているわけではありませんので、決して誤解しないでくださいね。徳というものからドンドン遠ざかっていく現在、あらためて見つめなおしてみたい、そう、教えられました。
宝くじ、買ってみようかなぁ~♪ 3億円、だめですかね? あやかりたいです!私の場合は欲が見え見え?(笑)
by ziziblog (2005-12-01 10:22)
ziziさん 有難うございます。いやぁお恥ずかしいです。昔から姉達や友人から「甘いね」「大甘だね」とよく言われましたよ。宝くじね・・・私は宝くじは駄目です。三百円以上当たったことがありません。神様が楽して一攫千金などとんでもないと睨めつけておいでなのでしょうね。
by sasuke (2005-12-01 17:58)
大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
by ziziblog (2005-12-05 13:16)
こんばんわ。初めまして。
ぱんだぞうママのところからお邪魔しました。
へぇ、あたしも
いいことあるといいなぁ・・・
by はにぃ (2005-12-07 21:01)
はにぃさん はじめまして よくおいで下さいました。ぱんだぞうさんのブログ大好きです。お休み残念です。忙しくてたまにしか書けませんが宜しくお願いします。
by sasuke (2005-12-08 15:49)
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
恥ずかしながら復活いたしました(笑)
ゆっくりのんびりやります!(笑)
by ziziblog (2006-01-01 20:13)